クリアな結論を出すには、図を描きながら考える

世の中には説明がとてもうまい人がいます。そういう人の説明は、論理が綿密でありながらスルリと頭の中に入ってきます。逆に説明が下手な人の説明は、聞いていて何となく過不足があるように感じる上、複雑で理解しづらいものです。
この違いは、説明自体の良し悪しというよりも、説明より前の、物事を考えるスタンスにあるように思います。
両者をよく観察してみると、クリアな結論を出す人は考えるときによく図を描くことに気づきます。図といってもマンガのようなものではなく、円や四角の中に文字が入っているようなもののことです。彼らは情報の数だけ四角を作り、それらを線で結んだり、動かしたり、グループ化したりしながら結論を探っていきます。
この「図を描く」という方法には1.情報操作性、2.全体可視性、3.明確性という3つの性質でメリットがあります。

1.情報操作性:情報加工のコストが安く、直感的

彼らは四角を描くことにより、情報を一つの塊として扱います。一つの塊となった情報は、それぞれ独立に存在するようになるので、グループ分け、消去、結合といった加工が簡単にできるようになります。
比較対象として、文を書きながら内容を思考していった場合を考えましょう。途中で思考の構造が変わったとします。するとカット&ペーストで文を移動することになりますが、文をカットするとき、ペーストするときの両方で周りを地ならしする必要が出てきます。それは文の滑らかな流れを阻害しますし、無駄な労力を使うことになります。
また、一旦文として作成するとある程度シッカリしたもののように見えてしまいがちです。完成した文から論理的な甘さを見つけ出すのは高コストです。また、大局的な視点で観察すると実はいらない文章であっても、可愛いわが子をを消すのには勇気がいるでしょう。
それに対して、四角で囲っただけの情報は、独立性が高いため接合面の問題を考える必要もなく、つながりがクリアなので邪魔なものを見つけて消去することも簡単にできます。つまり、加工のコストが非常に安いのです。
また、その加工はとても直感的にできます。一つの塊に複数の情報が入っていると感じたときは、その四角を消して幾つかの四角に書き直し、それを配置しなおすだけです。現実世界に近く、とても直感的な操作です。

2.全体可視性:情報の取捨選択や、構造の見直しが楽

四角で囲った情報をそれぞれ線でつないでいくと、木のような構造になっていきます。幹として結論が存在し、幹から伸びる線の先には大きな題目が幾つかあり、それぞれの題目には小さな情報が紐づいている。それが数段階あるかもしれませんが、すべての情報が結論に収束して行く、そんな関係になっているはずです。
この構造が取れれば、情報のヌケがどこにあるのかがパッと見て分かります。それが結論に直接紐づく題目レベルで足りないものなのか、題目に紐づく情報のレベルで足りないものなのか、もっと小さなレベルで足りないものなのか。足りないレイヤーが分かれば,当該情報を探すのも簡単です。
逆に、苦労して集めた情報でも、木に組み込まれない情報は今回必要のない情報であることが明らかになります。苦労した分残したいですが、消さなくてはなりません。その決心をするためにも全体をみる必要があります。
また、全体が見えることでイビツなところがわかります。例えば、ある情報が2つの親情報に紐づいてしまっていることを発見するかもしれません。その場合は、情報を2つに分割するか、全体の構成を見直す必要があることが分かります。

3.明確性:結論がわかりやすい

最後は、考えるときではなく、相手に説明するときのメリットです。この「相手」には聴者としての自分も含まれます。目標を立てるときだって、わかりやすい目標であるほど長続きし、達成しやすいものでしょう。
1と2で見てきたように、図を書きながら考える方法は、適切な情報を取捨選択し組み合わせているわけですから、当然論理は洗練されており、納得の行くものになっています。
それと同時に、最終産物が木のような図であるため、説明に適切な図のプロトタイプが考え終わった時点で完成しています。適切な図があれば、相手も概形をすぐに把握できるので、内容理解が速く正確になります。

名刺の裏一枚に書ききれないアイデアは、大したアイデアではない

アメリカの心

という言葉がありますが、良い結論は単純で分かりやすいものです。

まとめ

思考をする際に図を用いることで、直感的に情報を扱いながら、統一感のあるシンプルな結論に達することができる
ということでした。この手法は、他人の話を聞く時にも通用する話だと思います。例えば、「誰かの話す論理や読んでいる本に対して批判的な目が持てない」という悩みは、図を描きながら話を理解し、その全体構造を見ることができれば自然と解決するはずです。
思考訓練は全てそうですが、繰り返しによって速度と正確性が上がっていくものです。慣れてくれば、頭の中に図が描かれるのでしょうし、図を紐付けていく速度・正確性も上がっていくのでしょう。それまでは、意識的に図を描き、試行錯誤をしていく必要があるかもしれません。
その訓練の一環として、夏くらいまでブログを書いてみます。できれば週1ペース。