注意書きには「何ができない」ではなく「何ができる」と書く

他の人と同じスペースで仕事を行っていると、注意書きを書かなくてはならないことがあります。古典的には「ペンキぬりたて注意」などが挙げられます。
注意書きは短くないと読んでくれませんが、それと同時にキチンと情報を伝えなくてはなりません。これは意外と難しいことです。読者が必要な情報を簡潔に伝えることが要求されるからです。たとえば以下の注意書きを見てください。

申し訳ありませんが、この機械を10時間占有します。

この注意書きは簡潔で誰もがちゃんと読むでしょうが、あまり意味のある情報ではありません。この機械がいつから使えるのか読者は分からないからです。この注意書きは読者の視点に立っていないと言わざるを得ません。
しかし、何となくで注意書きを書くと、こんなものを書いてしまうものです。注意書きを書く際には何か簡単なルールが必要なのです。では、どんなルールを自分に課せば分かりやすい注意書きを書くことができるでしょうか?
そのルールの一つとして、「何ができない」という書き方ではなく、「何ができる」という書き方をすることが挙げられます。そのルールに従うと、先程の例の場合には

現在使用中。21:00から使用できます。

という書き方になるはずです。
この書き方は、こちらが伝えたい情報ではなく、相手が知りたい情報を伝えています。書き手目線ではなく、読み手目線で書かれているのです。『この機械は21:00まで使えません。』という書き方も同じことを伝えていますが、結局その注意書きから読者が知りたい情報は21時から使えることです。読者が知りたいのは、一般的に「何ができないか」ではなく「何ができるか」なのです。
また、この書き方はポジティブな印象を与えます。語感の問題ではありますが、制限されていると感じを無駄に与える必要はありません。コップに半分の水が入っているときに、「半分しか入っていない」と書くか「半分も入っている」と書くかの違いのようなものです。集団生活をしている場なのですから、ネガティブな言葉をあえて使う必要はありません。
もちろん、以上の話は「立ち入り禁止」などの注意書きには使えるものではありません。もし何時から何時の間は入れるなどの制限があるのであれば「○時〜○時の間は入れます」と書くべきでしょうが、恒常的に立ち入り禁止であるのであれば、読者が知りたい情報も「立ち入り禁止」であることだけです。「何ができるか」という情報が無いのですから、「何ができない」と書くしかありません。
情報を伝える際は常に、自分が伝えたい情報ではなく、相手が知りたい情報を伝えるべきです。しかしそれを無意識的に行うのは難しいです。ですから、今回のようなルールを自分で決めることで、意識的にやる必要があると思います。

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